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最終更新日:2021.08.02

公開日:2021.08.02

  • #基礎知識

【Amazon黎明期を知るブリッジタウン・エンジニアリング社監修!】EC物流とは?その課題や解決策を解説

1. はじめに

はじめに

EC市場の発展や社会構造の変化なども手伝って、EC物流の需要は増加する一方です。しかし需要の高まりに反して現場の生産性はなかなか向上しておらず、今も人の手による非効率な運用が常態化しています。
今回は、EC物流とは何か?現状と課題及び解決策について、Amazon黎明期を知るブリッジタウン社( https://www.brtown.com/ )のインタビュー及び監修に基づいた内容となっています。

自社ECの物流について悩んでいる担当者、経営者の方々にとって、自社の取るべきアクションの方向性を考えるきっかけとなります。

EC物流とは?

EC物流は、インターネットを通じて商品やサービスを売買する「EC=Electronic Commerce」と物流を掛け合わせた言葉です。ECは日本語で「電子商取引」と表されることもあり、一般的に「ネットショッピング」や「インターネット通販」などと呼ばれています。

近年インターネットの普及やスマートフォンの浸透によってEC市場は劇的に発展し、物流にも大きく関わることになり、物流代行会社の業務拡大と新規参入が増加している一方で、自社独自に物流の強化を図る企業も見受けられます。

仕組み

EC物流も標準的な仕組みは、“入荷→入荷確認→棚入れ→在庫→ピック→梱包→出荷”と他の物流と共通ですが、多数の客様から随時ばらばらに注文が入ってくるなどECならではの特徴があります。
昨今では、お客様のサービスレベルを向上させるために、入荷から出荷までの作業が多様化しています。そのため今までの標準的な仕組みでは対応しきれなくなってきています。例えば、単にお客様に早く届けるだけではなく、希望日時に届けるために、倉庫内の作業時間、配送業者への引き渡し時間、会員顧客や配送距離などを考慮して倉庫内の作業優先順位を決めるなどお客様にとっての質と利便性を追求する高度な仕組みが存在します。

EC物流ならではの特徴

EC物流は一般消費者向けのBtoCが多く、ギフトラッピングなどの個別対応も重要視される傾向にあります。ここでは、それぞれの特徴について詳しく解説します。

●BtoC向け物流が多い

EC物流は企業対企業のBtoBよりも、企業対一般消費者のBtoC向け物流が多いという特徴があります。
BtoBでは数十個から数百個、時には数千個といった大量の商品を納入することが多い一方、BtoCは一般消費者を対象としているため1件ごとの発送が1個や2個である場合も少なくありません。加えて、センターに一括で納入する場面も多いBtoBに比べると、BtoCは発送先が多岐に渡るのも特徴のひとつです。

BtoCのビジネスでは在庫を最小限に留めてアイテム数を増やし、少量多品種の販売形態を取るケースがよくあります。また賞味期限対象や危険物対象商品などの取り扱いもあります。
この傾向から、EC物流では倉庫における在庫管理が煩雑になりやすいという側面がみられます。

●ギフトラッピングなどのサービスレベルの向上が重要になる

例えば、EC物流の特徴の一つとして、ECサイトで購入した商品をプレゼント用とするためのギフトラッピング需要が比較的高いといえます。そのためショップはギフト用の袋で包装をするだけでなく、メッセージカードを添付したり、熨斗をかけたりとさまざまなギフトラッピングに対応する必要があります。コスメ用品や健康食品では会員のグレードによって異なるチラシやサンプルを封入するなどの個別対応を行うショップも多く、ますますパーソナライズされた物流が重要になってきています。

パーソナライズにより特別なことが増えると作業工数も増えます。例えばギフト用の包装は通常の包装より時間がかかります。ギフト包装を化粧紙から化粧袋に変えて効率を向上させ、その分お客様のコスト削減に還元するような工夫も必要になります。袋で対応することにより自動化もしやすくなります。お客様へ心をこめてギフト用紙で梱包した作業を袋に変える判断をするには勇気のいることです。この変化へ正しく対応できることが将来の成長に大きな影響を与えます。

EC物流が勢いを増す背景

EC物流が勢いを増す背景には、巨大ECサイトの存在や人々の認識の変化があります。なぜこれほどまでにEC物流が急速に発展しているのか、その理由を解説します。

巨大ECサイトの存在と増加

近年、国内外で巨大ECサイトがいくつも登場しており、それらの存在がEC市場をさらに発展させているといわれています。

国内ではAmazonや楽天、Yahoo!ショッピングなどが代表的であり、インターネット上で購入したい商品があるとまずはこれらのECサイトを訪れるという人も数多くいます。さまざまな店舗が巨大ECサイト上に集結することで品ぞろえが強化され、ますます人が集まるというサイクルができあがっており、この流れは今後も続いていくとみられています。
海外ではアメリカのAmazon.comやeBay、ウォルマートなどが有名です。

●Amazonの例

Amazonの日本事業では、2020年度の売上高が約2.2兆円に着地しました。これは前年度比で25.5%の伸び率ですが、成長率はAmazonのグローバルに比較して低水準にとどまっています。
しかしながら、日本国内の小売マーケットにしめるEコマースの比率が約10%と低い状況を考えると、まだまだ成長するチャンスが残されています。世界においてもAmazonのアメリカ事業が2,635億2,000万ドルを記録し前期比36.1%の伸びをみせるなど、EC市場は世界的に発展を続けています。Amazonというプラットフォームがとどまることを知らずに巨大化し続けている結果でもあります。

人々の認識変化

巨大ECサイトの存在だけでなく、人々の認識変化や生活パターンの複雑化もEC物流の需要が高まっている理由のひとつです。

現在ではスマートフォンが普及して誰もが気軽にネットショップを楽しめるようになり、実店舗で商品を購入するのが当たり前の時代ではなくなりました。一般消費者が自ら情報を得られるようになったため、複数の商品を積極的に比較・検討したり、レビューや口コミを参考にして購入を判断したりするのはごく一般的になったといえます。

このように、「商品の購入は実店舗が当然」という認識が「インターネット上で商品を購入するのが日常生活の一部」という認識に変化したことで、EC物流が活性化していると考えられます。

日本のEC物流動向

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近年の日本のEC物流動向も、世界と同様に変化してきています。ここでは、EC物流の動向について解説します。

取引形態の傾向(BtoBからBtoC,CtoC等)

社会環境の変化も手伝って、従来のBtoB主体の取引からBtoCやCtoC主体の取引に社会全体が変化してきているのが現状です。単に顧客からの注文どおりに流れ作業で配送センターやエンドユーザーへ商品を納入するのではなく、「顧客のためにどのような利益をもたらすか」を真剣に考え抜けるメーカーが成功するようになってきているといえるでしょう。BtoCはBtoBに比べて変動要素が多く、注文を受けて順次発送する五月雨方式が一般的です。そのため、現場は都度対応に苦労している側面もみられます。

物流波動への対応

BtoCは比較的突発的な要素が強く、物流波動が起こるたびに都度対応を取るのが一般的となっています。一方で12月のホリデーシーズンなどあらかじめ予測ができる波動については、数ヶ月前から在庫予測や販売予測を立てて対策する企業が多いようです。
日本は海外に比べると季節変動(波動)がそれほど顕著ではなく、ある程度需要予想が可能な面も大きいといえます。そのため、あらかじめ多すぎず少ないすぎない適切な数を用意することで頻繁に発注しなければならない状況を防ぎ、物流波動に対応する方法が効果的だと考えられます。

今後特に拡大が見込まれそうな市場

ECが発展している現状から、どのような市場であっても拡大の可能性があると考えられます。今後はあらゆる市場においてEC物流が活性化し、さらに需要が伸びていくでしょう。

コロナの登場(更に需要拡大が見込まれる)

2020年初頭に発生した新型コロナウイルス感染症の影響によって、人々は世界的に外出を制限されるようになりました。
これによって実店舗で人と接触する買い物はできる限り避けて、ECサイトを通じて商品を購入しようと考える人々が急激に増加したといえます。このこともEC物流の需要拡大に拍車をかけているといえるでしょう。

現在のところ終息の兆しは見えていませんが、コロナウイルスの終息後も以前と同じ状況には戻らないだろうと考えている物流業者は多く、「アフターコロナ」の需要に対応していくための対策が求められています。

EC物流の課題及び解決策

EC物流の現場は、フェーズごとに課題を抱えています。そこで、EC物流の課題と解決策をご紹介します。

物流業務のフェーズ分類

物流業務は入荷、在庫管理、出荷、検品作業、梱包、ラストワンマイルのそれぞれのフェーズに分かれています。

入荷フェーズ

入荷フェーズにおいては、自動化が圧倒的に遅れているという課題があります。
荷姿が統一されておらず、業界の標準化を進めて自動化に取り組んでいく時期に差し掛かっているといえるでしょう。この傾向は世界的にも同様です。

在庫管理フェーズ

法規制により、日本の倉庫は上部の空間をうまく使えていないという課題があり、どのように多くの在庫を収めるかを考えていかなければなりません。
上部の空間の設備コスト抑えながら、在庫の密度を上げ、棚入れやピックの生産性を向上させるには相当な工夫と斬新なアイデアが必要になります。
また、在庫方法についてもアイテム数が多い場合はフリーロケーションと固定ロケーションを組み合わせて在庫密度や作業効率を高めるなど、オペレーションに工夫が必要です。

出荷フェーズ

ピッキングが自動化されていない企業は未だ多く、作業の効率化ができていない部分には改善の余地があります。現状のデジタル機器やロボットではピッキング作業の中の商品を探す時間や歩行時間を削減できる効果は期待できますが、商品を棚の中からつかみとるような作業に活用できるレベルまでは技術が進歩していません。しかしながら、将来の技術進歩の能拡張性に対応できることを考慮しながら、デジタル機器やロボットの導入によって、生産性を高める工夫が効果的です。
それと重要なことは、デジタル機器やロボットを使用しなくてもピックの方法の仕組みやソフトウェアの変更によって大きな改善が期待できるということを忘れないことです。

検品作業フェーズ

出庫の際に必ず検品作業が発生しますが、この工程を簡潔に完了する手段を探す必要があります。
画像処理による検品作業や前工程の自動化によって、人手が介入しないオペレーションにすることである程度改善できると考えられます。自動化は故障時の復旧時の処理の間違いなども考慮して進めないとハードウェアやソフトウェアが対処できずに大量にミスが発生する可能性があります。
ポカ除けや作業のしやすさなど様々な作業改善と自動化によって作業品質を向上させることが同時に必要になります。

梱包フェーズ

商品の梱包に時間がかかりすぎており、生産性が低下しているという課題があります。緩衝材が必要ないものまで過剰梱包してしまい、時間もコストもかかりすぎている現場は少なくありません。
商品のダメージを防ぎ資材費をいかに安く抑えて生産性を高めるかが重要ですが、その課題に気がついていない企業も未だに多いといえます。消費者の品質へのこだわりによって過剰包装せざるを得なくなるなどの問題もあります。最小の梱包サイズに落とすことができれば、大幅なコストダウンをはかれる可能性が高いといえます。どの様に梱包から出荷までを自動化を導入するかはコストと生産性を改善させる一つの鍵となります。

ラストワンマイル

ラストワンマイルとは、「商品が最後に保管される地点から、エンドユーザーの手元に届くまでの区間」のことです。
現状では、倉庫や物流センター等で商品の配送状況を適切に管理できていない現場が多く、配送が非効率な運用になっている傾向がみられます。エンドユーザーに商品が届くまでの過程を正しくデータで把握することが大切です。

EC物流自動化の為に必要なものとは?

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これまでのEC物流はスピード感や改善能力が不十分であり、現場力が不足しがちなのが現状です。
コストや生産性を数字で具体的に理解することによって現場の生産性を可視化すると、さらにスピード感は上がっていくと考えられます。生産性の向上に意識が向けば、EC物流自動化を推進する動きが出てくるでしょう。

倉庫改善はEC物流における生産性向上のカギとなる

入出荷や在庫管理、検品作業・梱包など、物流現場といった各フェーズの作業効率を高めることで、物流業務全体の生産性を向上とコストダウンに繋がります。そのためには、拡張性と柔軟性に優れたロボットの導入による自動化を推し進めて現場のオペレーションを改善していくことが大切です。

事業環境の変化や現場の改善活動を見越した自動化の検討

自動化を進めて生産性が向上しても、事業環境の変化によって既存の自動設備が対応できずに生産性が低下し、設備・レイアウトの変更に大きな投資が必要になってしまう場合があります。最悪の場合は設備が使用できなくなってしまいます。
また、現場の改善活動を妨げる要因になる場合もあります。これらのことを十分に考慮して自動化を進める必要があります。
その点では、柔軟性、拡張性に優れたロボットタイプの設備導入による自動化を検討することは非常に価値あることです。

まとめ

EC物流の需要が高まる一方で、現場の生産性が向上せずにさまざまな課題が置き去りになっています。業務効率を高めるために、コストや生産性を指標や数値といったデータで把握し、改善するための行動が物流業界に求められているといえるでしょう。

EC物流を効率化するためには、従来のようなアナログな手法だけではなく、ロボットやデジタル機器などを導入して事業改善をはかる必要があります。運用体制をあらためて振り返り、現場の自動化によって生産性を高めるための取り組みを積極的に推進していくことが大切です。

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